紅茶と緑茶の違いとは?~製造工程によって変わる、お茶の種類

紅茶も緑茶も、もとは同じ「茶の樹」から作られるということをご存じの方も多いと思います。では、なぜ香りも味も見た目も違うのでしょうか。この違いには製造工程が関わっています。私たち日本人の生活にとけこんでいる二つのお茶について、その違いと共通点をお話します。

[1]お茶の原料について

お茶には、つばき科の植物である「茶の樹」の葉を原料とするものと、麦やそば、どくだみ、豆、ハーブなどの茶の樹以外の植物を原料とするものがあります。

茶の樹を原料とするお茶: 紅茶、緑茶、ウーロン茶 など
茶の樹以外の植物を原料とするお茶: 麦茶、そば茶、どくだみ茶 など

原料の違いがそのままお茶の種類の違いになるものと違い、茶の樹を原料とするお茶は“加工方法の違い(=発酵度の違い)”によって種類が変わります。そして、産地による環境の違いをはじめ、栽培や加工を担う作り手の違いによって異なる風味をまといます。

同じ種類の「茶の樹」からつくられる、紅茶と緑茶。それぞれの違いを知ることで、“本当においしいお茶”の楽しみ方が見えてくるかもしれません。

それでは、紅茶と緑茶の3つの違いについて詳しくご紹介していきます。

[2]紅茶と緑茶の違いとは?

紅茶と緑茶には、3つの違いがあります。

1.製造工程が異なる
2.“おいしさ”の基準が違う
3.お茶のいれ方に違いがある

1. 製造工程が異なる

紅茶とは、茶葉の“発酵する力”をフルに生かしたお茶といえます。ここでいう発酵とは、納豆やヨーグルトが発酵させる働きのある菌によって発酵するのとは異なり、茶葉に含まれるタンニンが酸化して発酵することを指しています。

これは、皮をむいたりんごを放っておくと茶色くなるのと同じ、といえばおわかりいただけるでしょうか。

紅茶と緑茶の1つ目の違いは、製造工程による発酵度の違いです。

紅茶は“完全発酵茶”といわれるものであり、最終段階まで茶葉を発酵させてつくられます。茶葉の発酵は火を通すことで止まるため、緑茶の製造工程では最初に火にかけられます。そのため、緑茶は“不発酵茶”といわれる発酵させないお茶になります。

2.“おいしさ”の基準が違う

紅茶と緑茶では、”おいしいお茶”の基準が異なり、栽培方法にも違いがみられます。

紅茶 緑茶
おいしいお茶の基準 香りや渋みが引き立ち、コクがある 渋みは抑えてあり、甘味がある
茶葉 ミネラルが豊富で、アミノ酸が少ない茶葉 アミノ酸を豊富に含んだ茶葉
土づくり 自然に近い土壌 窒素肥料を与えた土壌
気候 昼夜の寒暖差が大きいなど、ストレスが多い環境 穏やかな気候風土のなかで生育
茶の樹 老木も重宝される 若い茶の樹のみ、老木は植え替える

ミネラル…豊かな香りとコクを加える。
アミノ酸…甘みを加える。しかし、アミノ酸を含むことで、茶葉を発酵させる際に不要な化学反応を起こし、水色の美しさや紅茶の風味を損ねてしまう。

3. お茶のいれ方に違いがある

大きな違いは、湯の温度と抽出時間です。紅茶と緑茶では“おいしいお茶の条件”が異なるため、おいしさを引き出すための最適な温度や抽出時間といったお茶のいれ方に違いがあります。

紅茶(リーフティー) 緑茶(新茶)
≪1杯あたりの分量≫

  • 茶葉の量:キャディスプーンすりきり1杯(BOPなどの細かい茶葉)、山盛り1杯(フルリーフ)
  • 湯の温度:100度
  • 湯の量:150~200ml
  • 抽出時間:2~5分(茶葉の種類、飲み方によって異なる)
≪1杯あたりの分量≫

  • 茶葉の量:ティースプーン2杯くらい
  • 湯の温度:70~80度
  • 湯の量:150~200ml
  • 抽出時間:約40秒
1. ポットを使っていれます。

(別の香りが残っていると台無しなので、きちんと洗ったものを。また、いれる量に合ったサイズのポットを選びましょう。大きすぎるものはNG、一人分であれば、茶こし付きマグもおすすめです。)

2. 汲みたての水を強火で短時間で沸かします。

(そうすることで、空気がいっぱい含まれたお湯となり、空気の対流運動を助けて葉が開きやすくなります。)

3. 必ずポットとカップを温めます。

(ポットの温めは必須。温まったらお湯を捨てます。)

4. 必ずキャディスプーンで人数分の葉を計り、ポットに入れます。

(香りを立たせたいときやミルクティーのときは多め、軽く楽しみたいときには少なめにするなど、お好みに合わせて量を調整してください。)

5. 沸騰したお湯(コイン大の泡がボコボコとたくさん出ている状態)をそそぎます。

(お湯の量と温度がポイント。紅茶のおいしさ成分である「タンニン」を抽出するには、90度以上のお湯が必要です。お湯の量は、目盛りがないポットであれば、予め計量カップなどで計り目安をつけておきましょう。)

6. 2~5分むらします。

(紅茶のおいしさである「タンニン」は、一定のむらし時間により「カフェイン」と結びついてコクとまろやかさが出ます。)

7. ティーストレーナ―を使ってカップにそそぎます。

(最後の一滴までそそぎきってください。最後の一滴には、その茶葉のおいしさのエキスがつまっています。特に、大きな茶葉の場合は下にエキスが溜まります。ティーバッグの場合は、スプーンなどでギュッと押して絞ります。)

1. 急須に人数分の茶葉を入れる。

(心もち多めに入れると、味わいが深くなります。)

2. お湯を湯のみにそそぎ、70~80度に冷まして急須に入れる。(緑茶の渋みを抑えて、甘味を引き出すためには温度が大切です。80度以上になると渋みが強く出るようになります。電気ポットなどのお湯でもOK)
3. 40秒ほど待ち、急須のふたを押さえて軽く2~3回まわす。

(急須をまわすことで茶葉が開き、味がしっかりと出ます。)

4. 湯のみに一気にそそぐのではなく、少しずつそそぎ入れるようにする。最後の一滴までしぼりきる。

(2杯以上のお茶を入れる場合は、少しずつ順番にそそいでいきます。)

[3]温度による“おいしさ”の違いとは?

紅茶のおいしさは、香りや渋みが引き立っていることですが、上級編としてはお湯の温度を下げてみて、同じ茶葉でも異なる風味を楽しむこともあります。また緑茶の場合も、高い温度で抽出することによって香りや渋みを楽しむことがあります。

 

[4]紅茶と緑茶、似ているところは?

紅茶と緑茶は同じ茶樹からつくられるため、成分や効能に共通点が多くみられます。
(紅茶と緑茶に含まれる代表的な成分をご紹介します。)

・カテキン
ポリフェノールの一種。殺菌作用やコレステロール低下作用、体脂肪低減作用などの効果があります。(参考:日本カテキン学会

・テアニン(アミノ酸)
リラックス効果や睡眠改善作用があります。(参考:太陽化学株式会社

・カフェイン
覚醒作用や利尿作用、交感神経刺激作用があります。(参考:全日本コーヒー協会

・ビタミン
美容や健康に欠かせない、必須栄養素のひとつです。抗酸化作用や疲労回復、老化の予防などに効果があります。特に、緑茶に多く含まれる成分です。(参考:CLINIC FOR

・フッ素
歯質を強化してくれる成分。虫歯予防に効果的。(参考:岡山共立病院

・ミネラル
体を健やかに保つために欠かせない成分。ミネラルが不足することで、慢性疲労や便秘、肌荒れ・くすみ、貧血、偏頭痛、イライラ、食欲不振などの症状が起こります。ミネラル成分を適度に摂取することで、心身の不調に対する予防・改善に効果があります。

[5]おわりに

紅茶や緑茶とひと口に言っても、収穫のタイミングや地域、茶園マネージャーの仕上げ方によってまったく味が違います。まずは旬の時期のおいしさを知り、自分好みのお茶を見つけてみましょう。それぞれの個性を楽しみ、何度も飲んでいるうちに最初の印象が変わっていくこともあります。

繊細な味覚を持つ日本人だからこそ、お茶の品質にこだわる人が多い。そして、茶道の歴史がある日本に生まれたからこそ、私たちは、お茶の時間を大切にするのでしょう。日本は、紅茶も緑茶も品質の良いものが手に入る恵まれた環境といえます。よい茶葉を選び、丁寧にいれ、最高の一杯を楽しみましょう。

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